専門用語を使わないマーケティングのハナシ。 第9回

その9 デフレビジネス崩壊、その前に。

最近、競争の激しい「デフレビジネス」に陰りが出ています。

理由もいくつかありますが、典型的な動きとしては2つ。

ひとつ目は市場飽和による競争の単純化。ふたつ目は急激な円安による、調達コスト(材料・仕入れコスト)の高騰です。

この潮目ともいえる現象は、これまで時勢の流れに乗ってきた既存ビジネスでは脅威でしかありませんが、これから新たなビジネスに臨む起業家には最大のチャンスが来る事になります。

市場飽和による競争の単純化

これは市場競争が成熟し、どの店にも同じような商品が並び、価格の差別化でも限界が来たときにおこります。牛丼や回転すし、家電量販店を見思います。

牛丼はその人の好みもあるかと思いますが、米国産の牛肉を使用し「味」にこだわる吉野家でも、さすがに100円を埋める事はできません。

2月にBSE禍がおさまり米国産牛肉が生後30カ月以下まで輸入が解禁になり、豪州産との価格差が縮まると競争力が復活しました。その後、並盛280円の反抗体制をとったことは皆さんご存知の通りです。

ただ「すき家」「松屋」から顧客を取り戻しているのですが、お互いの顧客を奪い合うばかりで、市場そのものが大きくなったわけではなさそうです。

※余談ですが、市場が大きくなる可能性があるとすれば、高価格指向に走ったマクドナルドから顧客を奪うことでしょうか。

調達コストの高騰

デフレビジネスにとって、この円安は向かい風です。これまでの「超円高」に支えられて、海外から安い品物を大量に買い付けることで、冷え込んだ消費者の購買意欲を刺激し、国内産業を壊滅状況に追いやっていました。

このようなデフレビジネスの武器は、1に「安さ」、2に「安さ」・・・・です。この安さがなければ消費者にそっぽを向かれてしまいます。逆に言えば消費者の意識は「安さ」以外の興味はないのです。同じ安さになって初めて「品質」や「味」に気持ちが向いています。

みなさんも、価格コムやアマゾンのネットショップサイトでは、よほどの事でない限り、無差別に最安値の業者から買った経験があるでしょう。今後も最安値で買う事は間違いなさそうですが、円安が影響する分野は、その最安値が上がり始めており、出店者は買い控えの恐怖と戦うことになるはずです。

アベノミクスの経済効果と景況を表すレポートは回復を示す表記が増えましたが、まだまだ実感がわかないのが現実です。特にスーパーマーケットなどの大手流通業は、来るべき来年の消費税増税に備え、値下げ圧力を強めていますが、間に入る事業者の収益をこれまで以上に圧迫するだけなので、どこまで通用するでしょうか?

デフレ崩壊、中小企業の進む道。

小回りのきく経営が中小企業の持つ最大の利点とするならば、いまターゲットにするのは、日々の生活にあえぐ低所得者層より、株式の高騰で先行きの見通しが良くなった団塊世代やその扶助を受ける子供夫婦や孫あたりでしょう。

マスコミは常に大衆を弱者に置きますが、経済の動きによって損をする人々の裏で、必ず恩恵を受ける人がいるのです。長期金利上昇で住宅ローンを持つ世帯が、自己破産の危機にさらされる半面、不動産収入者や年金所得者の財布が大きく緩むことを忘れてはいけません。

大きな市場の流れに乗るのではなく、潮目の先を読み「これからの」流れにいち早く気づき行動することが重要です。

市場は小さくとも、自分のビジネスを充足するだけの規模があれば良いのです。それは大企業の入り込む余地がない「儲かるスキマ」だからです。

・・・まさに、「鶏口となるも牛後となるなかれ」ですね!

さて、冒頭でふれたようにデフレビジネスは鈍化傾向です。安売りがされていない業界や、大手も実現出来ない「安売りの方法」を見つけた人は別にして、これからビジネスを始めようとする人や、商品、サービスを開発し新たなビジネス展開を考えている人には、利幅を削るだけの単純な「安さで勝負」は、タイミングが悪い事が理解できたでしょうか?

また面白いビジネス視点を見つけたら配信します。次回をお楽しみに!

Writer:伊豫田 竜二(中小企業診断士) 平成25年 8月25日

資金繰りを楽にする方法 -資金繰り改善 第4回-

資金繰りを楽にする方法

『運転資金にもう少し余裕があれば、経営も安定するんだけど・・・』と考える中小企業の経営者は、多いのではないでしょうか。資金繰りをどうしたら楽にする ことが出来るか考えてみたいと思います。

たぶん誰に答えを聞いても「入りを増やして出を少なくすることですね」という答えが返ってきそうです。入りを増やして出を少なくすることが、企業経営の普遍的な経済原則ですから当然です。収益=売上-費用、収益を利益に、費用を経費に置換えれば、利益=売上-経費です。入りは売上げ、出は費用、経費、言葉はいろ いろありますがコストとも言われます。

収益性向上が全てを改善する

経営を考える上で、売上=費用+収益または、売上=経費+利益では決してありません。経営の原則を踏み外して売上高を上げる事ばかりに考えが行くと経営の指標が売上高だけになってしまい利益管理を怠り、どうしても売上げ重視になってしまいます。自ずと大口顧客のみが重視されがちになり全体的にキャッシュフローを良くすることに勢力を注がない傾向になりがちです。利益管理が重要です。

収益=売上-費用

の基本を行く経営の仕組みを作っていくことが資金繰りを楽にする道ではないでしょうか。

収益性向上は経営のあらゆる問題を解決します。企業のあらゆる問題を解決するためには収益性向上が最も重要です。そのための売上管理・コスト分析・利益管理の仕組みが重要です。

収益重視の経営はお客様を大事にする

売上げ重視は、どうしても大口顧客重視になると書きましたが、多様な顧客に目を向け顧客の変化を常に先取りし大口顧客にも常に提案型の姿勢を持っていなければならないのではないでしょうか。利益管理の成果として収益性が比較的高い小口顧客の再発見があるかもしれません。収益重視の経営は、お客様を大事にすることが出来ます。大口顧客に新しい提案をする種を見つけることが出来ます。

Writer:吉澤正一(中小企業診断士) 平成25年 8月25日

資金繰り表を活用しよう -資金繰り改善 第3回目-

資金繰りは経営の生命線

初回の寄稿で現預金月商比率について「現預金は売上高の1ヶ月相当はほしい」と書きました。また、前回2回目の寄稿では「借入金月商倍率」について述べました。債務過剰になって元利返済に苦しまない為には借入金は月商の4倍程度内に抑えるべきだと書きました。言うは易く、多くの財務担当者は、「そんなの分かっている、それが出来ないから苦労しているんだ」と言われるでしょう。

概して中小企業は資金繰りが大変だと言われます。財務担当者は、毎月借入金残高の把握や会社の入出金や売掛金の回収状況の把握、また金融機関への元利返済・取引先への支払準備・手形決済資金の準備・給料その他費用の支払い準備など会社の生命線を握る仕事に忙しいと思います。

資金繰り表の大切さ

資金繰りとは、簡略に言えば、「会社のお金の出入りと支払いの時期と額を把握し、運転資金や設備資金を検討し、且つ資金ショートを未然に防ぐ為のお金のやりくりを計画的に行い管理すること」という事であると思います。

そのために作るのが資金繰り表ですね。資金繰り表を作ることによって自分の会社のお金がどのように動いているか、またこれから資金不足に陥らないか、不足しそうな場合はいつごろ金融機関の支援をお願いすべきか検討することが出来ます。

中小企業では資金繰り表を作っていない企業も多いと言われていますが、まずはお金の動きを把握する為に月次単位の資金繰り表や月内の日々の日繰り表の作成を行うのが望ましいと思われます。

資金繰り表の作成

資金の出入りにはいろいろな要素があります。「入」を増やし「出」を減らす経営努力の結果として、現預金月商比率や借入金月商倍率の適正数値に近づきます。

資金繰り表作成は中小企業基盤整備機構の中小企業ビジネス支援サイトや日本政策金融公庫のサイトから学ぶことができますから大いに参考にしてほしいと思います。

Writer:吉澤正一(中小企業診断士) 平成25年 7月25日

借入金月商倍率について -資金繰り改善 第2回目 -

借入金月商倍率とは

前回5月の寄稿で「現預金月商比率」について述べました。会社が月商の何ヶ月分のキャッシュを保有しているかを示す指標についての話しでした。最低1ヶ月分程度の売上相当の現預金は保有しておきたいと書きました。今回は、「借入金月商倍率」について述べたいと思います。

借入金月商倍率=借入金総額÷(年売上高÷12)

で計算され、借入金の総額が1年間の売上の何か月分に相当するかを表す数字です。

借入金月商倍率の意味

個人向け貸付けは、貸金業法によって総量規制(借入は年収の3分の1迄)の対象となりますが、個人が事業用資金として借入れる場合は原則として総量規制の対象とはなりません(この場合は、多くは担保物件または保証人が必要となる)。

事業活動においては、個人でも法人でも借入額の総量規制つまり借入金上限はない訳ですが、借り過ぎ防止の目安として許容される一般的な上限を知っておくことは重要です。

借入金月商倍率の目安

前回寄稿した現預金月商比率(手元流動性比率)は、会社の資金繰りの状況をこの数値を見ることにより類推することが出来ます。

一方、借入金月商倍率の方は、会社の経営状況を確認する目安であり財務健全性を知る数値の一つです。金融機関は、融資をするしないや金額を決める目安の一つとして使っています。業種にもよりますが、借入金月商倍率が4ヵ月以内なら健全な状態と見ていいとされており、6ヶ月に達した時は要注意状態、10ヶ月を超えると他の経営指標を見て場合によっては破綻懸念先と格付けされるでしょう。

過去に大手企業でも、借入金月商倍率が10ヶ月を超えてまもなく資金繰りに行き詰ったというケースもあり借入においては重要な指標となっています。

Writer:吉澤正一(中小企業診断士) 平成25年 6月25日

現預金月商比率について -資金繰り改善-

現預金月商比率とは

現預金月商比率とは、会社が月商の何ヶ月分のキャッシュを保有しているかを示す指標です。取敢えずの資金繰り安定のためには、まずは1ヶ月分の売上相当の現預金を持っておくことです。計算式は下記の通りです。

現預金月商比率=(現金+預金+短期有価証券)÷(月当たりの平均売上高)

現預金月商比率の意味

黒字倒産という言葉がよく知られていますが、黒字であっても資金繰りがつかなくなると倒産の危機に陥ることがあります。片や、損益が赤字でも資金繰りが問題なければ当面の事業継続は可能です。そのため企業は資金の全てを事業活動に投下してしまうのではなく、もしもの場合に備えて一定の資金を運転資本として現金や普通預金等として保有しておく必要があります。

この現金や預金として保有している資金の月商(一ヶ月の売上高)に対する割合を現預金月商比率といいます。

現預金月商比率の目安

現預金月商比率は手元流動性比率とも呼ばれ銀行が企業の安定性を計る指標として重視されます。具体的には1ヶ月以上であることを一つの基準とし高ければ高いほど倒産危険度が低く優良であるとされます。

しかし、現預金月商比率が必要以上に高いと会社の資金繰り的には安定しますが、会社の資金効率が下がります。余裕があれば3ヶ月分の現金預金があれば理想です。

「企業の総合力=収益性×効率性」、言い換えれば、「事業の成績=利益率×回転率」ですから資金をできる限り多く保有していればよいというものではありません。

現預金月商比率は、中小企業は1.5ヶ月、資金調達力のある大企業は1ヶ月分くらいを目安にとするのが一般的に良いとされます。この水準を維持することは銀行に対する決算書の見栄えがよくなり安定的な支援が受けやすくなることに繋がります。次回以降も幾つか中小企業の資金繰りについて投稿したいと思います。

Writer:吉澤正一(中小企業診断士) 平成25年 5月25日

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