NPOあつぎみらい21の「かながわ Business Network」 2025年10月号 Vol.178

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  NPOあつぎみらい21の「かながわBusiness Network」
                2025年10月号 Vol.178
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こんにちは、NPOあつぎみらい21「かながわ Business Network」
編集部です。

実を言うと、ここ2週間ほど日本を離れておりました。その間に新首相の誕生
と連立政権枠組み変更とのこと。浦島太郎状態です。そんな中?でも、メール
マガジンをお届けします。

さて、今月の内容です。
1.<経営講座> ■【「ものづくり補助金」の最近の傾向】
2.<活動報告> ■【景気動向調査の活動について】
3.<経営情報> ■【各種セミナー情報】

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1.<経営講座> ■【「ものづくり補助金」の最近の傾向】
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通称「ものづくり補助金」と言われる経産省の補助金は、2013年に正確には
「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」という名前で始ま
り、その後、名称と中身を少しずつ変えながら現在も継続されて、中小企業・小
規模事業者の設備投資の原資として、活用されています。
筆者が最初に関わった、「平成30年度補正 ものづくり・商業・サービス生産
性向上促進補助金」では、以下のような内容でした。

『一般型:中小企業・小規模事業者等が行う革新的なサービス開発・試作品開
発・生産プロセスの改善に必要な設備投資を支援(補助額上限1000万円)

小規模型: 小規模な額で中小企業・小規模事業者等が行う革新的なサービス開
発・生産プロセスの改善に必要な設備投資を支援(補助額上限500万円)』

それに対し、今年の、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第
19次公募)」では、(いくつかの異なる枠が設けられていますが)最も応募が多
いのは「製品・サービス高付加価値化枠」で、その要件は以下の通りです。

『革新的な新製品・新サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を
支援 (補助額上限 従業員5人以下:750万円、従業員6人~20人:1000万円) 』

そして、「革新的な新製品・新サービス開発」の定義として、
『革新的な新製品・新サービス開発とは、顧客等に新たな価値を提供することを
目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発することをいいま
す。 本補助事業では、単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製
品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しません。 また、
業種ごとに同業の中小企業者等(地域性の高いものについては同一地域における
同業他社)において既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発は該当
しません。』

と書かれています。

平成30年度補正においては、「革新的なサービス開発・試作品開発」と並ん
で、「生産プロセスの改善」も対象になっていたのですが、今年の「第19次公
募」ではその文言が消えています。かつ、「革新的な新製品・新サービス開発」
に細かい注釈がついていて、文言を見る限りなかなかハードルが高い印象です。

多くの小規模製造業では、顧客企業からの指示に従って部品や製品を製作して納
入する、というビジネス形態なので、「革新的な新製品・新サービス」と言われ
ても当社には無理だ、と思ってしまう企業が多いのではないでしょうか。
そもそもこの補助金が始まった背景としては、日本の製造業の国際競争力の源泉
は、大企業・中堅企業のみならず、中小・小規模企業の「新製品・新サービス」
に限らない地道な活動であり、これを更に強化することで日本の製造業の国際競
争力を高めよう、という考え方があったと記憶しています。補助金の対象を「革
新的な新製品・新サービス」に限定してしまうのは、上記考え方がトーンダウン
してしまったようで残念です。
 それはともかく、このような条件でも採択されている企業(事業)はあります
ので、どんな事業が採択になっているか見てみたいと思います。採択された事業
の内容は公開されていませんが、タイトルは公開されています。これを参考に手
掛かりを探して見ましょう。
採択企業数は1698者(個人事業も含むため、「社」ではなく「者」とさていま
す)(また、一部「グローバル枠」も含む)でした。初めに業種別の傾向を見るた
めに、ランダムに17者(100者に1者)を選んで分類してみました。その結果、以
下の通りでした。

製造業(ソフト除く) 6者
ソフトウェア関係 4者
食品関係 4者
サービス業 1者
歯医者 1者
不明 1者

ソフトウェアは作ればある意味新製品ですし、食品関係は小規模企業でも自社製
品を持っている企業が多いので、これらの業種は採択されやすいのは頷けます。
しかるにハードルが高そうな製造業も最大の6者と健闘しています。

次に筆者が専門とする製造業に絞って掘り下げてみましょう。上でピックアップ
した6者のタイトルは、以下の通りでした。

CADCAMシステム導入による自衛隊制服向け高難度縫製の内製
施工現場の課題解決と生産性・品質向上を目指す多品種配管加工
最新CNCガス切断機導入による付加価値アップの挑戦
無線綴じ・筋入れ技術による高付加価値御な御朱印帳の製造
新型パイプ自動溶接機導入による建物建築業界への新規参入
再生医療分野対応のための高精度・高難度試作体制の構築

これらを眺めてみて、「新製品・新サービス」の条件となりそうな要素を列記し
ますと、
・難易度が上がると 新製品
・機能(付加価値)が増えると 新製品
・ニッチ分野に絞ると 新製品
・ある分野で当たり前でも分野が違うと 新製品
・製品をサービスと捉えてみる。同じ製品でも提供の仕方を変えると 新サービ

といえる可能性がありそうです。

ここでピックアップしたもの以外で、製造業に関するものでは以下のようなもの
がありました。

大口径鉄筋対応型加工特化サービスという新サービスの開発
切削加工設備導入による新サービス開発
角ダクト製造から設置工事まで一気通貫サービスで付加価値提供
ファイバーレーザー溶接機導入によるパーマロイ加工体制の確立
フレア加工による溶接を用いない配管加工サービスの確立
事業承継を契機とした鋼材一次加工の新サービス開発
生産工程の効率化により取り組む製造業向け金属加工の受託事業
フレアマシン導入による生産性及び施工品質向上を目指す取組み
高性能ベンダーの導入による複雑曲げ加工を用いた新製品開発
CNC旋盤導入による半導体製造装置向けアルミ鋳物部品の製造
CNCフライス盤の導入による生産性向上と新素材への対応力強化
新型充填機の導入による大容量歯磨きチューブの生産能力向上
バーリング加工導入により生産性向上及び高付加価値化を図る

これらの中で、「新製品」「新サービス」という文言が入っていないものがある
のは少し驚きです。(もちろん中味に「新製品」「新サービス」の要素があっ
て、それが評価されたのだと思いますが。)

これらを参考に小規模企業でも自社製品が「新製品」「新サービス」と言えない
か知恵を絞って(新傾向の)ものづくり補助金の申請に挑戦してみてはいかがで
しょうか。

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 Writer:鈴木 健一(中小企業診断士)
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2.<活動報告> ■【景気動向調査の活動について】
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▼景気動向調査の活動について
NPOあつぎみらい21では、厚木商工会議所のご依頼を受けて、厚木市の景気動向
調査を四半期ごとに行っています。
今回は、この調査についてと、調査を行う中で感じたことを、少し書きとめてみ
たいと思います。
まず、「景気動向調査」というのは、全国の商工会議所で行われているもので
す。
厚木市の報告書は以下のURLで公開されていますので、ぜひご覧ください。
https://www.atsugicci.or.jp/google-maps-xml/economy/

日本全体の結果は日本商工会議所のホームページで公開されています。
https://cci-lobo.jcci.or.jp/

調査の方法は、商工会議所の会員の皆様にアンケートはがきをお送りし、回答は
郵送またはWebで受け付けています。アンケートの内容は、「売上高が以前より
良くなったか、悪くなったか」「今後の見通しはどうか」といった、事業者さん
自身の“肌感覚”をお聞きするものです。私たちNPOでは、届いた回答を集計・分
析し、報告書としてまとめて、厚木商工会議所に提出しています。
テレビや新聞などでよく耳にする「日銀短観」も、性質としては似たような調査
です。

▼調査の流れ
作業は「集計 → 分析 → 報告書作成」という流れで進めていきます。
集計では、はがきで寄せられた回答をパソコンに入力し、Webでの回答と合わせ
てデータ化します。そのデータをもとに表やグラフを作り、全体の傾向を整理し
ていきます。
分析では、まず注目すべきポイントを探します。たとえば、過去と比べて上昇傾
向から下降に転じた項目、全国調査との違いが大きい項目、業種ごとに特徴が出
ている項目などです。そして、日頃の活動で得た知見や政治の動き、異常気象、
厚木市周辺の話題など、さまざまな情報を掛け合わせながら分析を深めていきま
す。
報告書作成では、分析結果をわかりやすくまとめ、グラフやコメントを添えて仕
上げます。できるだけ多くの情報を載せたいのですが、紙面の制約もあり、どの
内容を載せるかいつも悩みどころです。

▼調査を通じて感じること
この活動を通して感じる一番の課題は、「デジタル化の遅れ」です。
Webで回答してくださる方は全体の3割ほどにとどまっています。
たとえば、各国の状況を比較できる調査として「国勢調査」があります。
主な先進国の中で確認できた範囲では、全戸訪問で調査を続けているのは、日本
くらいのようです。多くの国ではWebでの回答が基本で、インターネットを使え
ない人だけ訪問しています。Webでの回答率も90%前後が普通ですが、日本はま
だ40%ほど。こうした違いを見ても、日本の生産性や業務効率の課題を感じま
す。

▼最後に
この調査は、厚木だけでなく、全国の事業者さんの“今の実感”が集まることで、
地域の景気を生の声から知ることができる貴重な情報源です。
これからの事業展開を考える際に、ぜひ参考にしていただければと思います。

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 Writer:脇本清明(中小企業診断士)
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3.<経営情報> ■【各種セミナー情報】
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▼ その他のセミナー・講演情報

厚木商工会議所 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.atsugicci.or.jp/category/seminar/

相模原市産業振興財団 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.ssz.or.jp/event

川崎市産業振興財団 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.kawasaki-net.ne.jp/seminar.html

横浜商工会議所 セミナー・講習会のご案内 
 http://www.yokohama-cci.or.jp/event/

川崎商工会議所 セミナー・講演会スケジュール
 http://www.kawasaki-cci.or.jp/event/index.html

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■ 編集後記
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冒頭に触れましたが2週間ほど日本を離れておりました。海外を旅するとサービ
スの質や丁寧さの違いを認識します。接客や色々なものの清潔さトイレ事情な
ど、先進国でも日本はちょっとレベルが違います。ただこれが、生産性の低さや
効率の悪さにつながっている面はないでしょうか。厚いサービスには経済的・心
理的なコストがかかります。サービスを提供する側から言えば、それは高価格で
提供されるべきです。
日本語のサービスという言葉は無料という意味にも使われます。もう少し合理的
に考える必要があるのではないでしょうか。

では、次回のメルマガもお楽しみに。

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メンバも当然非公開としています。ご安心ください。

発行者:特定非営利活動法人 NPOあつぎみらい21
編集長:脇本 清明(NPOあつぎみらい21事務局長)
Website: http://www.atsugimirai21.org/
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編集担当:橋向 博昭
E-mail: hiro@at-bridge.com
Website: http://at-bridge.com

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