NPOあつぎみらい21の「かながわ Business Network」 2025年6月号 Vol.174

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  NPOあつぎみらい21の「かながわBusiness Network」
                2025年6月号 Vol.174
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こんにちは、NPOあつぎみらい21「かながわ Business Network」
編集部です。

夏が始まったかと思うと、今日は梅雨空。こんなことを毎年書いているようにも
思います。ともあれ、冷房の季節がやってきました。

さて、今月の内容です。
1.<経営講座> ■【中小企業とカーボンニュートラル】
2.<活動報告> ■【製造現場リーダー育成プログラム 開催および募集】
3.<経営情報> ■【各種セミナー情報】

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1.<経営講座> ■【中小企業とカーボンニュートラル】
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製造業をはじめとして、中小企業にもカーボンニュートラルの取組を求める圧が広
がっています。中小企業経営として、この状況をどう捉え、対応するのが良いかを
考えます。

▼カーボンニュートラルとは
人為的な温室効果ガス(GHG)の大気への排出を実質的にゼロにする取組全般を指
します。
化石燃料の使用に伴う二酸化炭素(CO2)をはじめとする人為的なGHG(7種)の大
気への排出により世界平均気温が上昇しています。世界が対策をしない成り行きで
は21世紀末には1850~1900年の平均気温(産業革命前平均)に対して、世界平均
気温が4℃以上高くなる科学的なシミュレーション結果が出ています。この気温上昇
を1.5℃に押さえることが世界の合意事項(COP26:第26回国連気候変動枠組み条
約締結国会議以降)となっており、このためには2050年までのカーボンニュートラ
ルが必要条件とされています。
ちなみに、カーボンニュートラルを含むGHG排出を抑制する対応を緩和策といい、
地球温暖化による気候変動の影響(異常気象等)への対応は適応策と呼ばれていま
す。

▼中小企業への影響
異常気象の頻度増加など気候変動の影響は顕在化しており、BCP(Business
Continuity Plan:事業継続計画)の観点から適応策の必要性は高まっていま
す。一方で、ほとんどの中小企業にとってカーボンニュートラルに取り組む「義
務」(=法的根拠)はありません(※1)。ただし、「義務」がないのであって、
政策としては、緩和策のための大きな経営的な環境変化を生み出そうとしていま
す。環境変化は業種やサプライチェーンなど各企業が置かれている状況によりタイ
ミングが異なりますが、「取引先要求への対応」、「エネルギー・原材料コストア
ップへの準備」、「GX製品普及政策への対応」、「海外法規制等への対応」等は、
いずれ意識せざるを得ないものとなっています。

※1エネルギー多消費企業やGHG排出量の多い企業は省エネ法や温対法への対応が求
められるが、現時点では、それ以外に民間企業が従うべき地球温暖化対策に関する
法規制はない。

▼中小企業経営としての対応
主に、取引先要求への対応、エネルギー・原材料コストアップへの準備、GX製品普
及政策への対応、海外法規制等への対応がポイントとなります。

▼取引先要求への対応
環境省の政策、取引先SBT目標の達成、グローバルサプライチェーンからの要求、
そして、GX製品普及リーグの取組などを背景に、大企業からサプライヤーへのカー
ボンニュートラル関連の要求が増加しています。中小企業白書2024には、製造業や
運輸業・郵便業では、15%以上が脱炭素に向けた協力要請を受けたとありますが、
その事前段階となるアンケート等を含めた潜在的な要請はそれ以上と考えられま
す。実質的な強制力を持つ取引先からの要望に応えるために、カーボンニュートラ
ルに取り組むというのが当面の状況です。多くの場合、大企業は多数のサプライヤ
ーへ要求を出しているはずなので、先走って対応をするのではなく、相手のやり方
や求めているものを理解し意識あわせをした上で具体的な対応を検討することが適
切です。

▼エネルギー・原材料コストアップへの準備
2026年から順次カーボンプライシング政策が開始されます。カーボンプライシング
とは、CO2の大気への排出量に応じてコスト負担をさせる政策です。CO2排出に対
価(ペナルティ)が課せられることを意味します。直接的な対象は大企業(10万t-
CO2排出/年)や化石燃料等輸入業者とされていますが、間接的には価格転嫁により
CO2排出量の多い原材料・エネルギーの使用者に幅広く影響(コスト負担)が及ぶ
ことになります。現状は、CO2排出量を削減したGX製品等はコストアップ要因とな
りますが、意識的にCO2排出量の少ない原材料やエネルギーを選択するタイミング
を計ることで、将来的なコストアップのリスク抑制につなげます。

▼GX製品普及政策への対応
CO2排出に対価(ペナルティ)が課せられることは、裏返すと、CO2排出量が少な
い製品には付加価値がつけられることになります。製品単位のライフタイムCO2排
出量(CFP:Carbon Footprint of Products)を算定して、その算定結果を
基にしたGX製品としての価値を付与する政策が進められています。いち早い戦略的
な取組は、省エネによるエネルギーコストダウンにとどまらず、製品付加価値向上
へもつながる可能性を有しています。

▼海外法規制等への対応
欧州連合(EU)は、国境炭素調整措置(CBAM)を2023年より導入しています。
CBAMとは、カーボンリーケージ(※2)を予防する政策です。現在は、特定品目に
ついて炭素排出量の報告が義務となっているのみですが、2026年からは課税対象と
なる品目も出てきます。また、対象品目が拡大される可能性もあります。これに応
じた国内政策としてCFPの普及推進が始まっており、各種ガイドライン等が公開さ
れています。直接的な輸出製品がなくとも、国内出荷した部品が輸出製品に組み込
まれてEUへ輸出される場合には、取引先からCFP等が要求される可能性もありま
す。
また、EUは、「企業サステナビリティ報告指令(CSRD:Corporate
Sustainability Reporting Directive)」により、EU域内の大企業や上場
企業に対し、サステナビリティに関する情報を開示することを義務付けています。
気候変動に関しては、Scope1~3(※3)の開示が対象となります。EUでビジネス
に関わる中小企業についても、2026年度会計から対象となることが予定されていま
す。

※2企業が温室効果ガス排出規制の厳しい国から、規制の緩い国や地域へ生産拠点を
移転し、結果的に地球全体の温室効果ガス排出量が削減されない、あるいは増える
現象
※3 CO2排出起因の範囲のこと。Scope1は化石燃料の燃焼等による直接的なCO2排
出、Scope2は電気・熱の利用による間接的なCO2排出、Scope3はサプライチェー
ン上でのCO2排出の範囲とする。

▼GXとDX
政策の方向性として、GXのためにDXによる見える化、デジタル技術による省エネ推
進があげられています。具体的な事例において、実効的にはDXによる生産性向上が
目的となっていることが多く、GXの見える化を目的としてDX化を進めると費用対効
果の点では疑問が残ります。理由としては、中小企業のGXにおけるほとんどの取組
においては、DXが得意とするデータ収集・分析稼働削減、リアルタイム性を必要と
しないからです。逆に考えれば、リアルタイムで大量のデータ収集・分析をベース
とする取組に至るならば、DXを取り入れる価値が出てくるといえます。

▼支援者の認識
カーボンニュートラルというと、DXによる見える化や省エネ等がフォーカスされま
すが、経営戦略的には、「取引先要求への対応」、「エネルギー・原材料コストア
ップへの準備」、「GX製品普及政策への対応」、「海外法規制等の状況と対応」の
すべてがカーボンニュートラルとなります。
中小企業のこれらのリスク・機会を認識・理解し、支援先企業の環境・状況を踏ま
えて最適な取組を提案・支援していくことがポイントです。表面的なカーボンニュ
ートラルを進めることで、当事者企業においては、稼働多く実り少なくとなり、む
しろ拒絶感を生み出してしまうことを危惧します。また、取組の外部アピールにお
いては、グリーウォッシュ等として法規制違反(国内現状では景品表示法違反の適
用)となる可能性も出てきているので、十分な知見の基に支援することの認識も不
可欠です。

┌───────────────────────────────────┐
 Writer:NPOあつぎみらい21理事
HKスモビ・テック研究所代表 北林博人(中小企業診断士) 
 Website: https://www.htok.ne.jp/
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2.<活動報告> ■【製造現場リーダー育成プログラム 開催および募集】
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▼製造現場リーダー育成プログラム 開催

「現場改善をさらに強力に進めたい、そんあリーダーを育てたい…」
そんな悩みを抱える企業様へ。
実践型リーダー育成プログラム、9月開講、募集開始!

現場の改善を進めたいけれど、現場を引っ張ってくれる人がなかなか育たない・・・
そんな声を、多くの製造業の方から聞きます。
「リーダーが問題に気づけない」
「ムダをムダだと認識できない」
「改善のやり方が分からない」
「人を巻き込むのが苦手」
もし、こうした悩みに心当たりがあれば、今回ご紹介する研修はまさにその打開策
となるはずです。

現場のリーダーには、職場の業績を達成することに加え、活気のあるイキイキとし
た職場づくりが求められます。特に「強い現場」とは、突発的な問題や事故、予期
せぬ変化に対応し、継続的に改善を進められる現場を指します。そのためには、問
題の発生を未然に防ぐ力と、変化に適応しながら成長し続ける力、気づき・改善す
る力が必要です。
本研修は改善する楽しさを学び、イキイキした職場つくることを目指し、特に見え
ていないムダを可視化し改善する方法を学びます。
『製造現場リーダー育成プログラム』は、単なる知識のインプットではなく、「現
場に即した演習・実践とフィードバック」を通して、自律的に行動できるリーダー
を育てる内容になっています。
研修はZoomで行いながらも、講師が実際に企業を訪問し、参加者一人ひとりの問
題解決・課題達成を個別に支援するという、ハイブリッド型のスタイルです。

■特徴

見えていないムダ・ロスを可視化し、改善する!
・製造現場の問題解決・課題達成手法について実践を通して学ぶ(改善の進め方を
 学び、現場の成果を出しながら学ぶ)
・リモートにて実施することで移動時間の負担なし
・部下指導できるようになることをめざします
・講師が各社の現場にお伺いし、改善のアドバイスをいたします

■内容

1)座学(講義とグループ演習)(9月24日~)
  ムダの可視化1:仕事の結果(ムダ)を明らかにする
  ムダの可視化2:仕事のやり方(ムダ)を明らかにする
  ムダの可視化3:本質的な問題(ムダ)、原因を明らかにする
  改善目標を設定する:問題を分け、目標・納期を決める
  課題設定を設定する:主要課題、詳細課題に分ける
  改善策、進め方を決め、計画を立案する
2)企業の個別テーマ実践
  企業の具体的な個別改善テーマに取り組みます
  進捗を確認し、成果に結びつけます
3)企業の個別訪問
  テーマは現場訪問にて講師がアドバイス

演習例としては、SDCA/PDCA体験演習、ロス(ムダ)構造図の作成、なぜなぜ分
析演習、課題設定演習、役割・機能展開演習、アイデア発想演習、日々報告チャー
ト作成演習、作業標準作成演習、発表チャート作成演習、さらにはAIの現場活用演
習など、現代の現場リーダーに求められる要素がしっかり詰まっています。

■ 講師プロフィール
講師  鈴木巧:リーダー、職長・安全衛生責任者トレーナー
NPOあつぎみらい21所属 TAKUMI安全品質ラボ代表
40年以上の間、大手メーカーにて開発から生産現場、ものづくりマネジメントに
取り組んできており、実践的な現場の改善、改革、問題解決、課題達成、仕事の進
め方改善を得意(専門)とします。

■ 開催情報(2025年度)
期間:2025年9月10日〜2026年2月(第2・4水曜、全12回)
時間:18:30〜20:30
開催形式:Zoom(+企業訪問1回)
対象:現場リーダーまたはその候補者
定員:10名(定員になりしだい締切り)
受講料:55,000円(税込)
主催:NPO法人あつぎみらい21
※ ExcelやPowerPointの基本操作ができる方が望ましい。

■ お申込み方法:
下記の必要事項を入れて電子メールでお申し込み下さい
会社名 住所 電子メール お申し込み責任者 受講者氏名
送付先:NPOあつぎみらい21小泉誠二 skoizumi@m5.dion.ne.jp

■ 最後に
「現場を変えたい」――その第一歩は、トップに代わり現場・職場を預かっているリ
ーダーの育成です。この研修を通じて、改善する楽しさを学び、イキイキとした職
場をつくるリーダーを育ててみませんか?

ご興味のある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください!

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Writer:鈴木巧  
TAKUMI安全品質ラボ代表/あつぎみらい21所属
リーダー、職長・安全衛生責任者トレーナー
キャッチコピー 見えていないムダ・ロスを可視化し、改善する!
Website: http://www.xxx.or.jp
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3.<経営情報> ■【各種セミナー情報】
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▼ その他のセミナー・講演情報

厚木商工会議所 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.atsugicci.or.jp/category/seminar/

相模原市産業振興財団 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.ssz.or.jp/event

川崎市産業振興財団 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.kawasaki-net.ne.jp/seminar.html

横浜商工会議所 セミナー・講習会のご案内 
 http://www.yokohama-cci.or.jp/event/

川崎商工会議所 セミナー・講演会スケジュール
 http://www.kawasaki-cci.or.jp/event/index.html

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■ 編集後記
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先月に引き続き、米価格の話題です。小泉農相の活躍?により、この一月で
大きな変化があったように見えます。が、現時点では平均価格が少し下がっ
た程度です。本当の大きな変化は、「構造改革にまで踏み込めるか」がポイ
ントです。日本全体を覆い尽くす、「変われない病」にメスを入れないと、
このまま世界に取り残されてしまうことになるのでは・・・

では、次回のメルマガもお楽しみに。

本メルマガは、GoogleGroupで発行しております。GoogleGroupは本来
メーリングリスト機能のサービスですが、読者の投稿はできません。
メンバも当然非公開としています。ご安心ください。

発行者:特定非営利活動法人 NPOあつぎみらい21
編集長:脇本 清明(NPOあつぎみらい21事務局長)
Website: http://www.atsugimirai21.org/
E-mail: mailmag@atsugimirai21.org

編集担当:橋向 博昭
E-mail: hiro@at-bridge.com
Website: http://at-bridge.com

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