NPOあつぎみらい21の「かながわ Business Network」 2024年3月号 Vol.159

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  NPOあつぎみらい21の「かながわBusiness Network」 
                2024年3月号 Vol.159
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こんにちは、NPOあつぎみらい21「かながわ Business Network」
編集部です。 
毎月1回、メールマガジンを通じて皆さまの経営に役立つ情報をお届けして
参りますので、どうぞ宜しくお付き合いください。
 
年々早くなってきた桜前線ですが、今年は予想に反し昨年よりも遅い開花状況
のようです。そろそろ、開花宣言がでてきますね。入学式にちょうど良いので
はないでしょうか。
コロナ禍も明けて、花見も楽しみです。
 
それでは、今号の内容です。
1.<経営講座> ■ 【「合理的配慮の提供の義務化」について考えてみる】
2.<活動報告> ■ 【厚木地区景気動向調査事業結果報告】
3.<経営情報> ■ 【各種セミナー情報】
 
 
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1.<経営講座> ■ 【「合理的配慮の提供の義務化」について考えてみる】
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▼はじめに
2024年4月1日から障害のある人への「合理的配慮の提供が義務化」されるこ
とをご存知でしょうか。これまでは、行政機関等は義務化されていましたが、
事業者は努力義務となっていました。それが4月1日から全事業者に義務が課
せられることになります。
今回は、内閣府が公開しているリーフレットを元に、「合理的配慮」とは何
か、を考えてみます。
 
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html
 
このパンフレットには、合理的配慮の考え方や事例が載っていますが、いろい
ろ考えていくと、どうすればよいかわからないことが出てきます。ちょっと前
に診断士仲間で話したことをベースにこの記事を書いていますが、まだどう考
えれば良いかわからないものもあります。この記事が合理的配慮を考えるきっ
かけになれば幸いです。
 
1.対象の範囲が広い
まず障害者の定義ですが、障害者手帳をもっている人に限らず、「日常生活や
社会生活で相当の制限を受けている人全て」となります。また、事業者は、営
利・非営利を問わず、「同じサービス等を反復継続する意志を持って行う者」
とされています。法人・個人事業主・ボランティアなどのほぼすべての事業者
が含まれます。
 
2.「合理的配慮」の基本的な考え方
「合理的配慮」の基本的な考え方として提示されているのは
・障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意志の表明があったら
・負担が過重でないときに
・必要かつ合理的な配慮を構ずる
と書かれています。
この中で「社会的なバリア」とは「障害のない人は簡単に利用できても、障害
のある人にとっては利用が難しく、結果として障害のある人の活動などが制限
されてしまう」ことを意味します。
 
ここでは「負担が過重」「合理的」という部分をどう解釈するかが問題になり
そうです。
 
一方、以下の留意点があります。
・必要とされる範囲で、本来の業務に付随するものに限られる
・障害者でないものとの比較において、同等の機会の提供を受けるためのもの
 であること
・事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと
 「付随する」「同等の機会」「本質的な変更」と解釈の幅が広そうな言葉が
 並んでいます。
 
それでは、リーフレットの事例を見ていきましょう。
 
3.合理的配慮の事例
事例(1) レストランで車椅子に乗った方が、車椅子のままで着席したいと意
思表明があった
  → 元々あった椅子を片付けて、車椅子のまま着席できるスペースを確保
   した   椅子を片付けるくらいはできそうですが、車椅子のままで
   着席してもらうために、どこまでする必要があるか、迷う場面もあり
   そうです。
 
事例(2) 難聴の方が来店されて、買い物をしたいと意思表明があった
  → 筆談により買い物できるように配慮した
 
様々な障害を持つ方々に対してどのような配慮ができるか考えておくことが必
要そうです。
 
事例(3) 文字の読み書きに時間がかかる方が、セミナーでホワイトボードを
最後まで書き写すことが出来ないと意思表明があった
  → スマホで撮影できるように配慮した(通常は撮影禁止になっている)
   このあたりまでは、読めばなるほど、と納得がいく事例です。
 
4.障害者の申し出を断っても問題にならない事例
事例(4) レストランで食事介助を求められたが、断った。
  → 食事介助は事業の一環で行っていないため。
  事例(1)に出てくる「椅子を片付ける」のは、椅子やテーブルをきれいに
  したり移動したりすることは日常的に行うので事業の一環と考える、とい
  う解釈でしょうか。
 
事例(5) 抽選販売を行っている商品で、抽選の申し込み手続きを行うことが
困難なため、予め商品を別途確保するように求められたが、断った
  → 障害をもっていない人と同等の機会を提供するもの、との観点から、
   障害を持っていない人よりも有利な扱いを行う必要はないため。
 
解決策として代わりに予約手続きを行う、ということが考えられそうです。
 
事例(6) 小売店で混雑時に視覚障害のある方から、店内を付き添って買い物
を補助するように求められたが、断った。代わりに買い物リストの商品を集め
て回った
  → 混雑時に付き添うのは過重な負担であるため。
   空いていたら店内を付き添って買い物を補助することが求められる、
   とも解釈できそうです。
 
5.「合理的配慮」で重要なのは「対話」を行って個別に判断すること
事例(7) ライブハウスで車椅子の方から参加したいと申し出があった。
 事業者「通常席は立ち見で、飛んだり跳ねたりする参加者が多く危険なの
 で、特別席はどうですか?」
 参加者「特別席は高いので購入は難しい。」
 事業者「通常席の一部エリアを区切って車椅子用スペースとし、他の参加者
 に配慮してもらうようアナウンスするのはどうでしょうか?」
 参加者「それでお願いします。」
 
このパンフレットでは「合理的配慮」で重要なのは「対話」だと指摘していま
す。そして、障害を持っているということで、一律に対応することは「不当な
差別的取扱い」になる、としています。
 
障害を持っているというだけで、以下の対応を行うことは出来ません。
・前例がありません
・もし何かあったら・・・
・以前◯◯という例があったので
障害は人それぞれですから、その人に合わせた解決策を「対話」を通じて探し
ていくことが求められます。
 
事例(8) ペースメーカーを利用されている方からジムへの入会申込があった。
 ペースメーカーを利用している方は、ジムで運動すると体調不良になる可能
性が高いため、お断りしたほうが良いのではないか、と対応するのは「不当な
差別的取扱い」となる可能性があります。
 
例えば、普段はどのような運動をしているか、主治医に参加可能なプログラム
を相談してもらう、などの対話を重ねて、必要な範囲でプログラムへの参加を
制限するといった「合理的配慮」が必要となります。
 
事業者が判断できないなら、主治医など、第三者に意見を聞くこともありだそ
うです。
 
「障害者の申し出を断っても問題にならない事例」の事例(4)、事例(6)につ
いては、どこまでが「事業の一環」「過重な負担」か、障害を持つ方と解釈が
異なったまま、「対話」が平行線を辿ってしまう可能性があります。
 
また、事例(6)のように、状況によって「過重な負担」になる時とならない時
がある場合は、障害を持つ方から見るといつもと違う対応をされた、と否定的
に捉えられる可能性があります。
 
障害のある方の申し出を断っても問題にならない場合でも、単にお断りをする
のではなく、しっかり「対話」を重ねて納得してもらう必要がありそうです。
 
5.違反しても罰則はないが
「合理的配慮」に違反しても罰則はありません。ただ、それよりも気をつけた
いのはSNSにアップされてしまうことです。思い通りならなかったり、法律を
間違って解釈していたりして感情的な内容をSNSに投稿されて、それを拡散さ
れてしまう可能性があることが懸念されます。
 
この記事を書いているときに、ちょうど以下のような事例が発生しました。
 
車椅子の方が映画館で席に着くまでにある4段の段差を乗り越えられないため
に、従業員が車椅子を持ち上げて対応を行っていたが、あとで支配人と思われ
る人から「今後はこの劇場以外で見てもらえるとお互いにいい気分でいられる
と思うのですが」といったことを言われたのだそうです。そしてその顛末をX
にアップしています。
https://twitter.com/NakashimaMinion/status/1768551963111927926
 
これに対して、映画館側は謝罪の記事を掲載しました。
https://www.aeoncinema.com/cinema/event/2024/vcmsFolder_2448/vcms_2448.html
 
しかし車椅子の方は「残念ながらもう行けないです」という記事を投稿してい
ます。
https://twitter.com/NakashimaMinion/status/1768652394404192563
(ここでは記事の内容に沿って纏めています。事実関係は調べていません。)
 
この方は、フォロワーが数万人いる所謂インフルエンサーの方だそうです。そ
のため反響も大きく、賛否両論入り乱れてたくさんの方が投稿されています。
中には、今回の「合理的配慮の義務化」を引き合いに出されている投稿もあり
ます。
 
この映画館は規模が大きい事業者ですので、事業への影響はほとんどないでし
ょう。しかし、もしこれが中小企業であれば、それなりの影響は免れなかった
と思います。
 
今回の対応が「過重な負担」になるかどうかは状況にもよりますが、支配人と
思われる方の「もう利用しないで欲しい」といった感じの文言や、一方的に伝
えたことが問題を大きくしてしまったと思われます。
 
▼まとめ
まず、事業者が合理的配慮についてよく知ることが必要となりますが、最終的
には顧客と直接対応する従業員の教育が大切になります。
 
ポイントは、
・障害のある方をお客様として受け入れるという意識を持つこと。
・事例などを元に、判断基準などの認識を従業員全体で合わせておくこと。
・障害のある方の話をよく聞くこと。
 
まず受け入れるという意思がなければ、双方が納得いく結末を迎えることはな
いように思います。
 
わからないことがあれば、内閣府が設けている相談窓口「つなぐ窓口」
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_tsunagu.html
や、自治体が設けている相談窓口に相談してみてはいかがでしょうか。
 
なお、過度な要求への対応としては、東京都が制定を目指しているカスタマー
ハラスメント防止条例が参考になるのではないかと思います。
 
この記事が「合理的配慮」について考えるきっかけになれば幸いです。
 
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 Writer:脇本清明(中小企業診断士)
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2.<活動報告> ■ 【厚木地区景気動向調査事業結果報告】
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▼概要
 2023年(1月~12月)の結果報告
 我々は、厚木商工会議所と協同で年4回会員の皆様の参加を頂き、「景気動
向調査」をおこなっています。今回、昨年度2023年(1月から12月ま
で)に行った調査結果の内容をまとめてみました。
 その動向を確認いたしましたので報告させていただきます。
 
調査の方法は、の日本商工会議所のLOBO調査と同じ要領で、対比もできるよう
にまとめてみました。
 ただし、業種としては8業種(製造・建設・運輸・小売り・飲食・卸売り・
不動産・サービスの8業種)でまとめています。
 調査は往復はがきとWeb両調査で毎回約1000社からお願いし約400社
程の回答を頂いています。
 今回は主に各業種の業況内の特に経営上のことに絞り込み、コメントしてみ
ました。これは上記LOBO調査との比較もできます。
 
1. 業種別内容
(1)製造業
売上の収益関係では、年間を通して若干の上昇傾向で、国内の経済動向に準じ
ており「売上」は伸びたもののそれ以上に「仕入れ価格の値上がり」「人材・
人手不足」などがマイナス要因として足をヒッパリまして、利益は出ているも
のの景気後退傾向でした。
 
(2)建設業
業況はほぼ横ばい傾向で、不況の中でも安定した売り上げ・利益を確保してき
ておりますが、仕入れ価格の上昇がマイナス要因となっており、人材不足も影
響が大きく見られます。
 
(3)運輸業
業況の上下変動差が大きく表れているが、売り上げ・利益は比較的良い状況で
経営環境は良かったと見たい。ただしドライバー不足が表面に出てきた時期
で、需要を上回る「人件費の高騰」が足かせになっているようだ。
 
(4)小売業
前般は売り上げ・収益ともに悪化傾向で、季節的な要因が後半は大分持ち直し
てきているが、回復へは「人材不足」「人手不足」が足かせとなっており、継
続するのが苦しい年となった。
 
(5)飲食業
業況の上下変動幅が大きい。前半は良、後半は不良と高低差が大きく苦しいか
じ取りが続いた年であったと思われる。景況感・季節変動に苦慮した年であっ
たともとれる1年であったのではないか。後半に持ち直してきているようだ。
 
(6)卸売業
業績は横ばい傾向で、後半の上昇が見込まれているが、世間状況に左右される
業種なので様子見状況であろう。特に「仕入れ価格の値上げ」に注目する必要
がありそうだ。やはり世間の上昇期待か。
 
(7)不動産業
状況は大きく下がっており、苦しい年となった。「仕入れ価格の上昇」がおお
きな要因で、世間状況の上昇期待か。
 
(8)サービス業
年間を通して世間の動きに左右されてきており、今後に期待が大きいが、この
業界は小規模事業者が多いため「仕入れ価格」「人手不足」等世間の変動をま
ともに受けるため、今後の動向期待か。
 
2.まとめ
以上各業種の特徴を拾ってみたが、この調査は事業の決算報告の数値ではな
く、経営者の「感」によるもので、その動きは業種内でもかなり差がみられる
が、世間の動向をどのようにとらえているかの観点で見ると原点が見えてくる
のではないか。
大きな社会問題として、「少子高齢化」「生成AI」などさらに大きく取り上
げられるようになりそうで、今後の経営かじ取りは一層の困難に直面するであ
ろうことが予測される。さらに詳しく見たい方は厚木商工会議所のホームペー
ジでご覧ください。
 
今後の経営かじ取りに期待したい。
 
 
                                 以上
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 Writer:NPOあつぎみらい21
      森本 肇 (企業OB)
 Website: ahmorimoto21@yahoo.co.jp
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3.<経営情報> ■ 【各種セミナー情報】
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▼ その他のセミナー・講演情報
 
厚木商工会議所 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.atsugicci.or.jp/category/seminar/
 
相模原市産業振興財団 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.ssz.or.jp/event
 
川崎市産業振興財団 セミナー/イベントのお知らせ
 http://www.kawasaki-net.ne.jp/seminar.html
 
横浜商工会議所 セミナー・講習会のご案内 
 http://www.yokohama-cci.or.jp/event/
 
川崎商工会議所 セミナー・講演会スケジュール
 http://www.kawasaki-cci.or.jp/event/index.html
 
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■ 編集後記
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昨日千秋楽を迎えた大相撲ですが、若手の二力士のおかげで、盛り上がった
場所でした。スポーツの世界では、比較的頻繁に若い力が台頭して世代交代
が起こります。ビジネスの世界ではどうでしょう。日本には、若い力を育て、
チャレンジを支援するマインドと仕組みが足りないように思います。
 
では、次回のメルマガもお楽しみに。
 
本メルマガは、GoogleGroupで発行しております。GoogleGroupは本来
メーリングリスト機能のサービスですが、読者の投稿はできません。
メンバも当然非公開としています。ご安心ください。
 
発行者:特定非営利活動法人 NPOあつぎみらい21
編集長:東 新(NPOあつぎみらい21事務局長)
Website: http://www.atsugimirai21.org/ 
E-mail: mailmag@atsugimirai21.org
 
編集担当:橋向 博昭
E-mail: hiro@at-bridge.com
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